社内で生成AIを使い始めた。議事録の要約が早くなった。メールの下書きも任せられるようになった。
ここまでは、多くの会社が実感されているところではないでしょうか。
一方で、「 それで売上は変わったのか 」と聞かれると、答えに詰まる。
これも同じくらい多くの会社に共通しています。
IPAが2026年7月に公表した「 DX動向2026 」の副題は「 広がるAI導入、DXは変われるか 」でした。
まさにこの状況を指した問いかけです。
本記事では、調査結果からAI活用の現在地を確認したうえで、効率化の次の一段に進むための順番を整理していきます。
本記事で解決できること
- AI活用が効率化で止まりやすい理由がわかる
- 次の一段に進んだ企業が何をしているかがわかる
- 自社で進めるときの3つのステップがわかる
本記事の想定読者
生成AIを社内で使い始めたものの、効果が業務時間の削減にとどまっていると感じている中小企業のご担当者様。
IPAの調査が示すAI活用の現在地
「 DX動向2026 」は、全国1,799社を対象とした調査です。
まず、AIをどんな用途に使っているかを見てみましょう。
| 用途 | 回答率 |
|---|---|
| 文書・音声の要約・翻訳・校正 | 82.5% |
| 文書・レポート作成 | 80.5% |
| 情報検索・収集・分析 | 77.0% |
| 製品・サービスの高度化 | 10.9% |
| 生産・物流計画支援 | 6.0% |
上位3つは、いずれも文書まわりの作業です。
そして、AI導入による効果を尋ねた結果がこちらです。
| 効果 | 回答率 |
|---|---|
| 業務効率化・迅速化 | 91.6% |
| 企画提案の品質向上 | 48.9% |
| 残業削減 | 29.2% |
| 顧客満足度向上 | 4.5% |
| 売上・利益向上 | 3.9% |
| 顧客拡大 | 2.7% |
業務効率化・迅速化は9割を超えています。
一方で、売上・利益向上は3.9%、顧客拡大は2.7%でした。
IPAはこの結果について、AIの活用が業務効率化・迅速化が中心となっており、DX・AIともに企業価値創出への展開は限定的な状況にあると述べています。
ここで大切なのは、3.9%を「 届いていない 」と読まないことです。
効率化までは、すでに9割超の企業が到達しています。
その次の一段は、企業規模を問わず、まだどこも本格化していない領域だということです。横並びのスタートラインに立っている、と捉えるほうが実態に近いでしょう。
なぜ効率化で止まりやすいのでしょうか
調査結果からは、3つの要因が読み取れます。
1. データの下ごしらえが済んでいない
AI利活用に向けた学習データの整備状況について、「 整備しておりAIに活用している 」と答えた企業は 7.0% でした( 図表3-15 )。
「 整備しているが十分ではない 」が28.4%、「 必要性は認識しているができていない 」が27.6% です。
そしてIPAは、学習データを整備しAIに利活用している企業のほとんどが、期待と同等かそれ以上のAIの効果を得られていると指摘しています。
文書の要約や翻訳は、社内のデータがなくても使えます。
けれど自社の顧客や商品を扱おうとした瞬間、社内データの状態が問われます。ここで止まる会社が多いということです。
2. 主導する体制が定まっていない
AI導入・利活用のリーダーシップ体制を見ると、次のようになっています( 図表3-23 )。
| 主導する立場 | 回答率 |
|---|---|
| IT部門の長 | 46.0% |
| 経営層 | 32.1% |
| 導入や利活用する現場の長 | 27.5% |
| CAIO以外の専任者 | 9.8% |
| CAIO( 最高AI責任者 ) | 2.9% |
IT部門主導が最も多い状況です。
IT部門が主導すると、まず全社共通で使える用途から入るのが自然な流れになります。文書作成や要約が上位に来るのは、この構造とも関係していそうです。
CAIO 〜 Chief AI Officer。最高AI責任者。AI活用を専門的に主導する役職。
3. リスク管理が追いついていない
AI・生成AI独自のリスクマネジメントを実施していると答えた企業は 14.2% にとどまりました( 図表3-18 )。
一方でIPAは、AIで効果を感じている企業ほどリスクマネジメントを実施できており、AI導入の効果とリスクマネジメントの実施状況には関係性があるとしています( 図表3-19 )。
ルールが定まっていないと、業務の中核にはAIを持ち込みにくい。結果として、周辺の作業にとどまる。そういう構図が見えてきます。
次の一段に進むための3ステップ
以上を踏まえると、進め方の順番が見えてきます。
ステップ1:AIに任せたい業務を1つ決める
「 AIで何かできないか 」から始めると、また文書作成に戻ってきます。
そうではなく、いま一番時間がかかっている業務、あるいは属人化している業務を1つ 選びます。
見積作成、問い合わせ対応、在庫の引き当て。何でも構いません。範囲を狭くするほど進めやすくなります。
ステップ2:その業務のデータを整える
選んだ業務に必要なデータが、いまどこにどんな状態であるかを確認します。
Excelに散らばっているのか、kintoneに入っているのか、そもそも紙なのか。
表記がそろっているか、必須項目が埋まっているか、更新が止まっていないか。
この確認と手入れが、実は一番効きます。前述のとおり、整備できている企業の多くが期待どおり以上の効果を得ているためです。
kintoneをすでに使っているなら、kintone伴走支援のように、現場の運用設計から一緒に進める形もあります。
ステップ3:使う人の判断基準をそろえる
AIが出した結果をそのまま使ってよいのか、誰が確認するのか、何を入力してはいけないのか。
この3点だけでも先に決めておくと、業務の中核でAIを使えるようになります。
大がかりなAIポリシーを作る前に、対象業務に絞った運用ルールから始めるほうが現実的でしょう。
なお、AI導入・運用上の課題として「 生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している 」を挙げた企業は45.8%でした( 図表3-16 )。
判断基準をそろえるには、まず使う人の理解を底上げする必要があります。AI活用研修やAI勉強会は、その土台づくりにあたります。
投資は増えている、という追い風もあります
もう一つ、前向きに読める数字を紹介しておきます。
AI投資の増減状況について、「 大幅に増加している 」が18.0%、「 やや増加している 」が33.3%。合わせて 51.3% の企業がAI投資を増やしています( 図表3-22 )。
また、官民による投資を期待するAIの分野では「 情報セキュリティ対策 」が58.4%、次いで「 AI関連人材の育成 」が53.0% でした( 図表3-24 )。
多くの会社が同じ課題を認識し、同じ方向に投資しようとしている段階だということです。
まとめ|効率化の次は、データと判断基準から
本記事では、AI活用が効率化で止まりやすい理由と、次に進むための順番を解説しました。
- AI導入の効果は「 業務効率化・迅速化 」91.6%、「 売上・利益向上 」3.9%( IPA「 DX動向2026 」)
- 用途は文書の要約・翻訳・校正82.5%、文書作成80.5%が上位
- 効率化までは9割超が到達済み。次の一段はどの規模の企業もこれから
- 止まりやすい要因は、学習データの整備7.0%、IT部門主導の体制、リスク管理14.2%
- 進め方は、業務を1つ決める → データを整える → 判断基準をそろえる、の3ステップ
AIの効果の差は、どのツールを選んだかよりも、手前の準備がどれだけできているかで決まっているように見えます。
そして手前の準備は、新しい投資をしなくても始められる領域です。
どの業務から始めるか、一緒に決めませんか
「 業務を1つ決めるのが、いちばん難しい 」
そう感じた方も多いのではないでしょうか。
どの業務が最初の一歩に向いているかは、いまの業務量の偏りや、データの持ち方によって変わります。社内だけで判断しづらいところです。
MOVEDは850社を超える企業様のご支援を通じて、規模や業種を問わず「 課題の構造 」を見てきました。対象業務の絞り込みから、データの整理、現場でAIが使われる状態づくりまでを一貫して伴走しています。
まずは相談からでもお気軽にお問い合わせください。いまの使い方をうかがったうえで、次の一手を一緒に整理します。
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kintoneのなかでAIを使いたいという場合は、kintoneで使えるAI研修という選択肢もあります。