生成AIを社内で使い始めると、ある段階で必ずぶつかる壁があります。
自社の顧客や商品を扱わせようとした瞬間に、うまく答えられなくなる。
原因はAIの性能ではありません。読み込ませられる状態のデータが、社内にないからです。
IPAが2026年7月に公表した「 DX動向2026 」を見ると、この状態にある会社が大多数であることがわかります。
そして同時に、ここを整えた会社が着実に効果を出していることも示されています。
本記事では、その調査結果を確認したうえで、kintoneを使っている会社がいまの環境のままデータを整えていく手順を解説していきます。
本記事で解決できること
- AIの効果がデータの状態に左右される理由がわかる
- kintoneのデータを整える具体的な観点がわかる
- 何から手をつければよいかの順番がわかる
本記事の想定読者
kintoneを導入していて、生成AIも使い始めた中小企業のご担当者様。AIに社内のデータを活かしたいと考えている方。
IPAの調査が示す、データ整備の現在地
「 DX動向2026 」は、全国1,799社を対象とした調査です。
AI利活用に向けた学習データの整備状況を尋ねた結果は、次のとおりでした( 図表3-15 )。
| 整備状況 | 回答率 |
|---|---|
| 整備しておりAIに活用している | 7.0% |
| 整備しているが十分ではない | 28.4% |
| 必要性は認識しているができていない | 27.6% |
整備してAIに活用できている企業は、7.0%です。
そしてIPAは、この結果についてこう述べています。学習データを整備しており、AIに利活用している企業のほとんどは、期待と同等かそれ以上のAIの効果を得られていることが分かる。
もう一つ、関連する数字を挙げておきます。
AI導入・運用上の課題を尋ねた設問では「 専門人材が不足している 」が50.1%で最多でした( 図表3-16 )。
つまり、多くの会社が 人が足りないから進まない と感じている。
けれど調査全体を通して見えてくるのは、効果の差を分けているのが人数よりも データの状態 だという構図です。
ここは新しいツールへの投資がなくても着手できる領域です。すでに持っているものを整えるだけで、先に進めます。
「 整っている 」とは、どういう状態でしょうか
データ整備という言葉は抽象的です。具体的な観点に分けてみましょう。
AIに使わせることを前提にすると、確認すべきポイントは4つあります。
1. 表記がそろっている
同じ取引先が「 株式会社ABC 」「 ㈱ABC 」「 ABC 」と3通りで登録されている。
こうした表記ゆれがあると、集計もできませんし、AIも同一の相手と認識できません。
いちばん地味で、いちばん効く整備がここです。
2. 必要な項目が埋まっている
自由記述欄に大事な情報が書かれていて、正式な項目は空欄のまま。
kintoneでよく起きる状態です。
AIは「 備考欄に書いてあることが実は重要 」という文脈を最初から知りません。埋めるべき項目を決めて、埋める運用にする必要があります。
3. どこが正しい情報なのかが決まっている
同じ顧客情報が、営業のアプリにも、請求のアプリにも、共有フォルダのExcelにも入っている。
どれが最新かわからない状態では、AIに読ませても正しい答えは返りません。
**この項目についてはこのアプリが正 **と決めること。これがデータ管理の基本になります。
4. 更新が止まっていない
半年前で更新が止まっているアプリは、データではなく記録です。
いま動いている業務とつながっているかどうかを確認しましょう。
kintoneを使っているなら、すでに素地があります
ここまで読んで、大がかりな話に感じられたかもしれません。
けれどkintoneを運用している会社は、実はもうこの作業の入口に立っています。
アプリの項目設計は、データ設計そのものです
どの項目を持たせるか。文字列にするかドロップダウンにするか。どのアプリと関連づけるか。
kintoneでアプリを作るときに考えているこれらは、データの構造を決める作業です。
デジタルスキル標準 ver.2.0 で新設された データエンジニア の仕事と、本質は同じところにあります。
入力ルールを決めるのは、データ品質の仕事です
日付の書式をそろえる。必須項目を設定する。ドロップダウンで選択肢を固定する。
こうした取り決めが、そのままデータの品質・信頼性を保つ運用になります。
同じく ver.2.0 で新設された データスチュワード は、まさにこの役割として定義されています。
デジタルスキル標準 〜 経済産業省とIPAが策定した、DXに必要な知識・スキルの共通のものさし。2026年4月に ver.2.0 へ改訂され、データマネジメント類型が新設された。
つまり、新しいことを始めるのではありません。
いまやっている運用を、AIに使える水準まで引き上げるという話です。
下ごしらえの進め方 4ステップ
全社のデータを一気に整えようとすると、まず終わりません。
順番を決めて進めましょう。
ステップ1:AIに任せたい業務を1つ決める
見積作成なのか、問い合わせ対応なのか、日報の分析なのか。
対象を決めれば、整えるべきデータの範囲も自動的に決まります。
範囲を狭くするほど、着手は早くなります。
ステップ2:その業務で使うアプリだけを見る
対象業務に関係するkintoneアプリを2〜3個に絞ります。
そのうえで、前述の4つの観点で状態を確認します。表記がそろっているか、項目が埋まっているか、どこが正なのか、更新が続いているか。
ステップ3:直すのではなく、まず一覧にする
いきなり修正を始めると、途中で終わらなくなります。
まずは「 何がどう崩れているか 」を一覧にしましょう。
そのうえで、AIに使わせるうえで致命的なものから直していきます。表記ゆれと空欄は優先度が高い項目です。
ステップ4:崩れないルールを1つ決める
直したデータは、放っておくとまた崩れます。
入力する人が迷わないルールを、1つだけ決めて周知します。
「 取引先名は必ずマスタから選ぶ 」「 日付は入力欄の書式に従う 」。この程度の粒度で十分です。
kintoneの運用ルールを現場に根づかせるところまで進めたい場合は、kintone伴走支援のように、課題の分解から運用設計までを一緒に進める形もあります。
整備が進むと、AI以外にも効いてきます
データの下ごしらえは、AIのためだけの作業ではありません。
同じ調査で、データの利活用状況について「 全社で利活用している 」と答えた企業は20.0%でした( 図表3-25 )。「 事業部門・部署ごとに利活用している 」と合わせても59.9%です。
データが整うと、次のことが同時に進みます。
- 集計やレポートが自動化できる
- 部署をまたいで同じ数字を見られる
- 業務の状況が経営層にも見えるようになる
AIをきっかけに手をつけて、結果として業務全体が見えるようになる。
順番としては、悪くない入り方ではないでしょうか。
まとめ|AIの効果を分けるのは、手前の準備です
本記事では、AIに使わせるためのデータ整備について解説しました。
- 学習データを「 整備しておりAIに活用している 」企業は7.0%( IPA「 DX動向2026 」図表3-15 )
- IPAは、整備できている企業のほとんどが期待と同等かそれ以上の効果を得ていると指摘している
- 整備の観点は、表記がそろっている・項目が埋まっている・どこが正か決まっている・更新が止まっていない、の4つ
- kintoneのアプリ設計と入力ルールづくりは、すでにデータ整備の実務にあたる
- 進め方は、業務を1つ決める → アプリを絞る → 一覧にする → ルールを1つ決める、の4ステップ
AI活用の差は、どのツールを選んだかよりも、手前の準備がどれだけできているかで決まっているように見えます。
そして手前の準備は、いま持っている環境のままで始められます。
どのアプリから整えるか、一緒に見てみませんか
「 うちのkintone、どこから手をつければよいのか判断がつかない 」
そう感じた方も多いのではないでしょうか。
どのアプリから整えるかは、業務の流れやアプリの作られ方によって変わります。中を見ないと決められないところです。
MOVEDは850社を超える企業様のご支援を通じて、規模や業種を問わず「 課題の構造 」を見てきました。データの現状整理から、運用ルールの設計、現場で崩れずに回る状態になるまでを一貫して伴走しています。
まずは相談からでもお気軽にお問い合わせください。いまの状況をうかがったうえで、どこから整えるとよいかを一緒に見ていきます。
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kintoneのなかでAIを使う方法を知りたい場合は、kintoneで使えるAI研修という選択肢もあります。