デジタルスキル標準が2026年4月に ver.2.0 へ改訂|国が示す「 DXに必要な人材像 」はこう変わりました

DXという言葉を聞かない日は、もうありません。

とはいえ、いざ社内で進めようとすると「 そもそもDXって、どんな人がいれば進むのか 」で止まってしまう会社は多いのではないでしょうか。

その問いに国が答えを出したものが「 デジタルスキル標準 」です。

そして2026年4月、この標準が ver.2.0 に改訂されました。AIの普及を受けて、必要とされる役割そのものが組み替えられています。

ただ、原本はPDFで数百ページ。IT部門を持たない会社の担当者が、これを読み込むのは正直つらいところです。

本記事では、ver.2.0 で何が変わったのかを、専門用語をかみくだきながら整理していきます。

本記事で解決できること

  • デジタルスキル標準 ver.2.0 の変更点が5分でわかる
  • 6つの類型と17のロールを一覧で把握できる
  • 自社で何から手をつければよいかの順番がわかる

本記事の想定読者

DXや人材育成を任されているものの、IT分野が専門ではない中小企業のご担当者様。情報システム部門がない、あるいは一人しかいないという会社を想定しています。


そもそもデジタルスキル標準とは? 2つの標準でできています

デジタルスキル標準は、経済産業省とIPA( 独立行政法人情報処理推進機構 )が2022年に策定したものです。

DXを進めるうえで「 どんな知識やスキルを、誰が持っていればよいのか 」を示した、いわば国が作った共通のものさしと言えます。

構成はシンプルで、2つの標準に分かれています。

全員向けの「 DXリテラシー標準( DSS-L )」

こちらは、職種を問わずすべてのビジネスパーソンが対象です。

営業でも経理でも製造でも、働く人全員が身につけておきたい基礎的な知識と姿勢がまとめられています。

内容は次の4つに分類されています。

分類内容
マインド・スタンス変化に向き合う姿勢、事実に基づいて判断する、まず試してみる、など
WhyなぜDXが必要なのか。社会・顧客・競争環境の変化
Whatデータやデジタル技術の基礎知識。AI、クラウド、ネットワークなど
How実際にどう使うか。ツールの活用、セキュリティ、モラルとコンプライアンス

全社員向けの研修を企画するとき、この4分類がそのまま研修の骨組みになります。

推進する人向けの「 DX推進スキル標準( DSS-P )」

もう一方は、実際にDXを担う人のための標準です。

「 類型 」という大きなくくりがあり、その下に「 ロール( 役割 )」が定義されています。

そして今回の ver.2.0 改訂で、大きく手が入ったのがこちらでした。

DSS-L 〜 DXリテラシー標準の略称。全ビジネスパーソン向け。 DSS-P 〜 DX推進スキル標準の略称。DXを推進する人材向け。


2026年4月の ver.2.0 改訂、5つの変更点

改訂の背景として、IPAは「 DXの実現に不可欠なテクノロジーとしてAI活用が進む 」ことを挙げています。

AIを本格的に使おうとすると、その手前にあるデータの整備や、組織そのもののあり方が問われる。そうした流れを受けての改訂です。

順に見ていきましょう。

1. 「 データマネジメント 」の類型が新しく加わりました

今回いちばん大きな変更点です。

これまでデータに関わる人材は「 データサイエンティスト 」という1つの類型にまとまっていました。

そこから データを整えて、使える状態に保つ役割 が、独立した類型として切り出されています。

新しく定義されたロールは3つです。

  • データスチュワード … 事業の現場を知る立場から、データの品質・信頼性・安全性を保つ運用を担う。現場にデータ活用を根づかせる役割
  • データエンジニア … データの収集・統合・加工・提供の各工程を整え、継続的に使える仕組みをつくる
  • データアーキテクト … 組織全体のデータの構造と流れを俯瞰し、全社的な活用とガバナンスを両立させる設計を行う

注目したいのは、データスチュワードの説明に「 事業ドメイン知識に基づき 」という言葉が入っていることです。

つまり、データを一番よく知っているのは現場の担当者である、という前提に立った定義になっています。

外から専門家を採用する話ではなく、いま業務を回している人の役割を広げる話として読めるところが、中小企業にとっては重要なポイントではないでしょうか。

2. ビジネスアーキテクトの役割が見直されました

これまで1つだったビジネスアーキテクト類型が、3つのロールに分かれました。

  • ビジネスアーキテクト … 経営戦略を全体最適の事業構造に落とし込み、変革のロードマップを立案する
  • ビジネスアナリスト … 業務・組織・システムを分析し、要求を整理してエンジニアに伝える。関係者のコミュニケーションハブとなり、利害を調整する
  • プロダクトマネージャー … 特定の製品・サービスの責任者として、企画から構築、その後の改善までを担う

改訂の趣旨には「 個別事業やプロジェクトだけでなく、ビジネスモデル変革を推進するため 」と書かれています。

一つひとつの業務改善から、事業のかたちそのものを変える方向へ、射程が広がったかたちです。

なかでもビジネスアナリストは、多くの会社に「 実質的にはもういる 」役割かもしれません。

現場の困りごとを聞き取って、ベンダーや情報システム担当に伝えている方。あの動きが、国の標準では正式な役割として定義されています。

3. デザイナーに「 コミュニケーションデザイナー 」が加わりました

デザイナー類型は、これまでサービスデザイナーとUX/UIデザイナーの2つでした。

そこに3つ目として、コミュニケーションデザイナーが新設されています。

定義はこうです。ステークホルダーやユーザーとの接点を横断し、ブランドの理念とビジョンを言語化する。一貫したメッセージとビジュアルで、製品・サービスの意義や使い方を正しく伝える体験を設計する。

見た目をきれいにする役割ではありません。伝わるように設計する役割が、DXの推進体制のなかに位置づけられたということです。

社内にツールを入れたのに使われない、という悩みは多くの会社にあります。

その原因が「 伝え方 」にあるとしたら、それは担当者の努力不足ではなく、役割が用意されていなかっただけかもしれません。

4. AIの実装・運用とAIガバナンスのスキルが増えました

データサイエンティスト類型に、AIの実装・運用に関するスキルと、AIガバナンスに関するスキルが追加されています。

生成AIについては、実は2023年8月の時点で「 生成AI利用において求められるマインド・スタンス 」がDXリテラシー標準に補記されていました。

ver.2.0 では、そこからさらに一歩進んで、AIを業務に組み込んで運用し、リスクを管理するところまでがスキルとして定義されたことになります。

5. 共通スキルリストが整理されました

すべての類型・ロールに共通して求められるスキルをまとめた「 共通スキルリスト 」も、5つのカテゴリーと13のサブカテゴリーに再編されました。

あわせて、全ロールのスキル重要度が見直されています。

加えて、組織変革において関係者の連携や共創をデザインのアプローチで促す「 デザインマネジメント実践 」に関するスキルも追加されました。


6つの類型と17のロール 一覧

ver.2.0 で定義されている類型とロールを、一覧にまとめました。

自社にどの役割があって、どこが空いているのかを確認するときに使ってみてください。

類型ロール担うこと( 要約 )
ビジネスアーキテクトビジネスアーキテクト経営戦略を事業構造に落とし込み、変革のロードマップを立案
ビジネスアナリスト業務・組織・システムを分析し、要求を整理して伝える。利害調整
プロダクトマネージャー製品・サービスの責任者として企画から改善まで担う
デザイナーサービスデザイナー顧客価値を定義し、製品・サービスの方針と仕組みを設計
UX/UIデザイナー顧客・ユーザー体験の設計、情報設計、機能や外観のデザイン
コミュニケーションデザイナーブランド理念を言語化し、一貫した伝え方を設計・運用
データサイエンティストデータビジネスストラテジスト事業戦略に沿ったデータ・AI活用戦略を考え、実現を主導
データサイエンスプロフェッショナルデータの処理・解析から有意義な知見を導き出す
データマネジメントデータスチュワードデータの品質・信頼性・安全性を保ち、現場に活用を根づかせる
データエンジニアデータの収集・統合・加工・提供の仕組みを整える
データアーキテクト全社のデータ構造と流れを設計し、活用とガバナンスを両立
ソフトウェアエンジニアフロントエンドエンジニア画面側( クライアントサイド )の機能を実現
バックエンドエンジニアサーバ側の機能を実現
クラウドエンジニア/SRE開発・運用環境の最適化と信頼性の向上
フィジカルコンピューティングエンジニア現実世界のデジタル化。デバイスを含む機能の実現
サイバーセキュリティサイバーセキュリティマネージャーセキュリティリスクを検討・評価し、対策を管理・統制
サイバーセキュリティエンジニアセキュリティ対策の導入・保守・運用

一覧を見て「 うちには一つも当てはまる人がいない 」と感じたかもしれません。

ただ、IPAは すべての役割をそろえる必要はない と明記しています。1人が複数のロールを兼ねることも、複数人で1つのロールを担うことも想定されている、という書き方です。

企業の規模や取り組むテーマの大きさによって、担い方はそれぞれでよい。標準はそういう設計になっています。


IPAの調査から見える、着手のヒント

では、実際の企業はどこまで進んでいるのでしょうか。

IPAが2026年7月に公表した「 DX動向2026 」に、参考になる数字があります。全国1,799社への調査結果です。

まず、DXを推進する人材像を「 設定し、社内に周知している 」と答えた企業は 16.2%( 図表4-5 )。

そしてDX推進に必要なスキルを「 把握できていない 」と答えた企業は 52.8% でした( 図表4-8 )。

多くの会社が、同じ地点にいるということです。

もう一つ、興味深い数字があります。

人材の「 質 」が大幅に不足していると答えた企業の割合を、必要なスキルを把握しているかどうかで分けると、把握している企業は40.6%、把握できていない企業は64.0%( 図表4-10 )。

23.4ポイントの差がついています。

IPAはこの結果について、スキルの把握状況が人材の「 量 」「 質 」の適切な把握や確保と関連していると述べています。

採用や研修の前に、まず自社の現在地を把握することが効いていると読める数字ではないでしょうか。

デジタルスキル標準は、その把握のためのものさしとして使えます。

なお、DX推進者の育成を体系的に進めたい場合は、DX推進者育成研修のような、戦略立案からデジタル活用のプロセスまでを扱うプログラムを検討してみるのも一つの方法です。


自社で進めるときの3ステップ

ver.2.0 を読んだあと、何から手をつければよいか。3つのステップにまとめました。

ステップ1:いまいる社員の役割を、標準の言葉に置き換えてみる

新しく人を採る話ではありません。

「 現場の困りごとを聞いてベンダーに伝えている人 」は、標準で言えばビジネスアナリストに近い。「 kintoneのアプリを作って運用ルールを決めている人 」は、データスチュワードの要素を持っている。

まずはこの置き換え作業から始めるのが現実的です。

社内の役割に国の標準と同じ名前がつくと、その人が何をしている人なのかが、社内で説明しやすくなります。

ステップ2:空いている役割のうち、1つだけ選ぶ

一覧を見ると、空いている役割はいくつも見つかるはずです。

すべてを埋めようとすると動けなくなります。

自社がいま困っていることに一番近い役割を、1つだけ選んでみてください。データが散らばっているならデータスチュワード。社内に伝わらないならコミュニケーションデザイナー、といった具合です。

ステップ3:その役割に必要なスキルを、共通スキルリストで確認する

選んだ役割に対して、共通スキルリストのどの項目がどの程度必要かは、ver.2.0 の本体に記載されています。

そこまで確認できれば、研修を選ぶときの判断基準ができあがります。

「 とりあえずDX研修 」ではなく、「 この役割のこのスキルを埋めるための研修 」という選び方に変わるはずです。


この改訂を、どう受け止めればよいか

改訂と聞くと「 また新しいことを覚えないといけないのか 」と感じるかもしれません。

ただ、デジタルスキル標準は2022年の策定以降、2023年8月に生成AI関連の補記、2024年7月に ver.1.2、そして2026年4月に ver.2.0 と、継続的に見直されてきました。

IPAも、新しい技術や産業構造の変化に対して「 見直し続けていく 」と明記しています。

つまり、この標準は数年ごとに更新されるものだということです。

一度で完璧に対応する必要はありません。自社も同じ周期で見直せばよい、と考えるほうが現実的でしょう。

ver.1.2 のまま研修を組んできた会社も、次の見直しのタイミングで追いつけます。


まとめ|デジタルスキル標準を、自社の言葉に置き換えるところから

本記事では、デジタルスキル標準 ver.2.0 の変更点と、自社で使うときの手順を解説しました。

  • 2026年4月、経済産業省とIPAがデジタルスキル標準を ver.2.0 に改訂
  • 最大の変更は「 データマネジメント 」類型の新設。データスチュワードなど3ロールが加わった
  • ビジネスアーキテクトは3ロールに再編、デザイナーにはコミュニケーションデザイナーが新設
  • AIの実装・運用とAIガバナンスのスキルが追加され、共通スキルリストも5カテゴリー13サブカテゴリーに整理
  • 全部の役割をそろえる必要はない。1人が複数を兼ねることも想定されている
  • まずは、いまいる社員の役割を標準の言葉に置き換えるところから

DX人材というと、どこかから連れてくるものだと思われがちです。

けれど標準を読み込んでいくと、すでに社内にいる人の役割を言葉にする作業から始められることがわかります。


まずは、自社の現在地を一緒に整理するところから

「 一覧は見たけれど、自社だとどの役割から埋めるべきかがわからない 」

ここまで読んで、そう感じた方も多いかもしれません。

その判断は、業種や組織のかたち、いま抱えている課題によって変わります。一般論では決められないところです。

MOVEDは850社を超える企業様のご支援を通じて、大手企業から地方の中小企業、自治体まで、規模を問わず「 課題の構造 」を見てきました。デジタルスキル標準を自社の言葉に置き換えるところから、必要な研修の設計、現場に定着するまでを一貫して伴走しています。

まずは相談からでもお気軽にお問い合わせください。今の状況をうかがったうえで、どの役割から手をつけるとよいかを一緒に整理します。

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