コワーキングだけじゃない。糸魚川・ビジネス共創拠点「 Catalo 」で開催された育てる“越境×共創”イベント

2025年8月25日(月)、新潟県糸魚川市に新たなビジネス共創拠点「 Catalo 」がグランドオープンしました。
2025年8月22日(金)に行われたオープニングイベントには、サイボウズ社長・青野慶久氏の基調講演をはじめ、ワーケーション、地域DX、行政連携をテーマにした特別対談、地元チャレンジャーによるプレゼンピッチが行われました。単なる働く場所を超えた「 関係人口を増やす拠点 」としての可能性、糸魚川の駅前から始まる新しい共創の形と、地域資源を活かした挑戦者たちの熱い想いをレポートします。
イベント概要

テーマ:地域の可能性と挑戦 —— 糸魚川から始まる共創の未来
日程:2025年8月22日(金)
会場:Catalo(新潟県糸魚川市大町2-2-22 キャッタービル1階/糸魚川駅〈日本海口〉徒歩4分)
プログラム
13:30〜 受付 & 施設見学
14:00〜 オープニングトーク
- 株式会社MOVED 代表取締役 渋谷 雄大
- 糸魚川市長 久保田郁夫 氏(ビデオメッセージ)
14:15〜 基調講演「地域DX〜未来の働き方へ」
- サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久 氏(オンライン出演)
15:00〜 特別対談「越境によるビジネス連携とワーケーションの可能性」
- 一般社団法人 日本ワーケーション協会 代表理事 入江 真太郎 氏
- あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO 沢渡 あまね 氏
- 糸魚川市 商工観光課 課長 山﨑 和俊 氏
16:00〜 糸魚川のチャレンジャーによる事例セッション
- 株式会社カネタ建設 代表取締役、緑でつなぐ未来創造会議(3M) 座長 猪又 直登 氏
- 糸魚川市役所 フォッサマグナミュージアム 学芸員 香取拓馬 氏
- クラブハウス美山 コミュニティマネージャー、株式会社 伝燈 共同代表 永田 伊吹 氏
- 株式会社清耕園ファーム、mûrir 横井 藍 氏
17:00〜18:30 登壇者・参加者 懇親会
市長からの動画のプレゼントも!オープニングトーク
オープニングイベントの開会は弊社渋谷の挨拶から始まりました。旧銀行の金庫が残る内装の概要や個室ブースなどCataloの魅力を紹介。続いて糸魚川市長からのビデオメッセージが上映されました。
銀行の建物から“ 関係人口 ”の拠点へ―Cataloが描く未来像
オープニングイベントの冒頭では、まず多くの関係者に来場いただいたことへの感謝の言葉を述べました。今回の施設運営はMOVEDにとって初めての挑戦であり、手探りで進めていると率直な発言。そのうえで、MOVEDだけではなく地域や参加者の皆さまが関わり、実際に使いこなし、一緒に盛り上げていくことが成功には欠かせないと強調しました。
会場となった「 キャッタービル 」は北越銀行の建物で、金庫やオフィスの名残をそのまま活かしている点を説明。さらに個室ブースやWeb会議用のスペースも備えており、在宅以外の仕事場としても利用できることを紹介し、ただのコワーキング施設に留まらず、色々な人が語り合い、課題解決の拠点にしていきたい思いを伝えました。
また、Cataloのコンセプトについては「 catalyze=触媒 」という言葉を由来に、多様な人や地域「 local=地域 」が交わり、化学反応を起こす場を目指していると説明しました。糸魚川に限らず各地の人材を巻き込み、交流の場として育てていきたいという考えです。東京・愛知・大阪・新潟など、各地のメンバーが混ざって活動する株式会社MOVEDの姿勢にも通じていると話しました。
Cataloのクラウドファンディングについても言及し、すでに約150名から支援を受けていることへの感謝を伝えました。

※クラウドファンディングは2025/8/22に終了し、無事目標金額を達成しました!
期待を込めた市長からのビデオメッセージ

市長はオープニングを祝福し、Cataloを「 交流・関係に加え“ 活動人口 ”を増やす起点 」と評価。「市内外から末永く愛される場に」とエールを送りました。糸魚川の潜在資源にも触れ、「 ともに進み、街の活力を高めよう 」と力強く呼びかけ。温かい祝意に、会場からは自然と拍手が起こりました。

オープニングの動画はこちらだワン!
MOVED代表 渋谷雄大 オープニングトーク「Cataloに込めた思い」 【ビジネス共創拠点Cataloオープニングイベント】
経験が語られた基調講演「 地域DX〜未来の働き方へ 」


基調講演をしていただいたのはサイボウズ社長・青野慶久氏。「 Cataloは“語ろう”だと思いました 」と開口一番に語られ、地方で育った自分の経験と人口減の現実を重ねつつ、働き方×DX×地域の具体例を軽快に解説されました。ユーモアに会場は何度も笑い声が響き、感嘆の声があふれました。
会場からの質問も活発に飛び交い、地域で何をしていくべきか活動ベースで理解できた参加者も多かったようです。
白熱の特別対談「 越境によるビジネス連携とワーケーションの可能性 」


糸魚川市 商工観光課 課長 山﨑 和俊 氏、株式会社MOVED 代表取締役 渋谷 雄大
特別対談では入江さん(日本ワーケーション協会)、沢渡さん(あまねキャリア)、山﨑さん(糸魚川市役所)が登壇しました。ワーケーションの最新動向、組織を超える学び、行政がプレーヤーになる姿勢まで、実装視点で議論が展開されました。旅行や観光の畑で培った経験から語る入江さん、共創の土壌づくりを説く沢渡さん、駅前を起点にした都市設計を描く山﨑さん。渋谷も含め、みんな共通しているのは「 糸魚川のファン 」だということ。それぞれの視点が噛み合い、会場の熱気が一段と高まりました。
外から見た糸魚川「 ホームでもアウェイでもない場所 」が対話と越境を促す
外から見た糸魚川の魅力について話を伺った際、沢渡さんから出てきたのが、糸魚川が” サードプレイス “である点でした。
糸魚川市は高速道路や新幹線での交通の便が良い立地にあります。新潟、富山、長野の県境都市として、どこにも染まらず「 誰のホームでもアウェイでもない空間 」を提供できます。この特性が、越境と共創をより盛り上げるのではないかと語られています。静岡県三ヶ日町の例を出し、上下関係もなくフラットに会話ができる場所に糸魚川もなっていると感じられたようです。
入江さんは新幹線が延伸され、京都から来る時間が1時間短縮したのに加えて「 会いたい人がたくさんいる 」と発言。「 一度関わると覚えてもらえるから、家族や仲間を連れてまた来たくなる 」と魅力を伝えてくれました。
渋谷も「 なんで糸魚川なの?と地域の人に驚かれることが多い 」と述べ、「 こんな魅力的な場所なのに、外からの視点がないと気づけない 」ので、ぜひ知っていただきたいと訴えます。
沢渡さんは「 Cataloのような場所があることが重要 」と話し、「 糸魚川から東京に行き、帰ってきた若者が『 糸魚川やるじゃん! 』と思って関係人口が増える仕組みがあるのが良い 」と熱く語りました。
コンパクトシティの強み|車がなくても“ まず駅前で会う ”導線
話題は、糸魚川のスケールが生む回遊性へ移ります。糸魚川は、駅前にCataloを含めた魅力的な場所が詰まっている、かつ少し歩けば海にも行けるコンパクトシティである利点があります。入江さんは「東京や大阪などの大都市では意外と車を使わない人も多い、そんな人でも糸魚川はとりあえず駅前に来れば、Cataloもできたし、会いたい人にすぐ会えるのが追い風になっている」と伝えました。
渋谷は「糸魚川は車で行ける魅力的なところがたくさんありますが、まず駅周辺のエリアを十分堪能してもらってつながってまた来たいと思ってもらえる工夫が必要」と述べています。
「駅前で知り合いを作って、『 次、ここ行ってみよう! 』となる流れが作りやすい場所ですよね 」と入江さんは加えて説明。
沢渡さんは、静岡県の大井川鐵道の例を挙げました。数年前の水害により、水没して使えなくなってしまった線路の部分を電動アシスト自転車で観光路線を作る取り組みがされているようです。
全国で実証実験されているグリーンスローモビリティ、電動のゴルフカートを街乗りのモビリティとして活用する例なども紹介。「 ゆっくりと風を感じながら景色を見るのが唯一無二の滞在体験となる 」と語ります。
さらに、沢渡さんからは「 共創デザイン 」についても紹介がありました。共創を生む組織環境と、共創に必要な個の能力をフレーム化したスライドの紹介は、会場の視線を奪います。
「共創力」「共創デザイン」の言語化・体系化を進めます/東北工業大学 下總(しもうさ)先生とともに【追記:2025年10月書籍化】
このフレームの中で渋谷や山﨑さんが注目したのは「 面白がり力 」。
山﨑さんは「 余白のデザイン 」も大事ではないかと述べ、「 糸魚川には埋もれているコンテンツも多く、オンリーワンやニッチなところもある。それを面白がってくれる人がいると良いですね 」と語っていました。
行政×民間の使い倒す文化 |“ 作る ”だけでなく“ 使う ”主体へ
最後は「 使い倒す 」具体策へと議論が進みます。沢渡さんは、「 MOVEDが作ったこの場所を地域の人がどう使っていくかが重要 」と述べました。
共創デザインで必要な「 場使い力 」についても議論が白熱します。
山﨑さんは「 Cataloは、民間がお金を出して、外からの人が運営に携わるという糸魚川にはめったにないすごいケース 」と伝えました。
具体的にどうやって使っていけばいいのかという問いかけに対して入江さんは「 初チャレンジお披露目会や、レストランの試食会などシンプルに人がつながれるイベントが良いのでは 」と語ります。何か、常に動いている場所だと感じてもらうのが大事です。館内の「 面白い人マップ 」で町の周回を促すのが良いという話は、渋谷も大きく頷いていました。
沢渡さんは「 会社や自宅でやりにくいことをここで試してみるのが良いのでは? 」と問いかけます。学び×共創を生業としている沢渡さんは愛知県豊橋市での読書ワーケーションの事例を挙げ、『 自分の興味のある読書会 』をぜひおすすめするとのことでした。
最後に山﨑さんは、昼はCatalo、夜は気軽に糸魚川の町に出てぜひ交流して欲しいとメッセージを残しました。



白熱のディスカッションは動画で見て欲しいワン!
特別対談「越境によるビジネス連携とワーケーションの可能性」 【ビジネス共創拠点Cataloオープニングイベント】
未来が輝く糸魚川チャレンジャーピッチ
対談のあとは糸魚川で活動する4組のチャレンジャーが登壇し、それぞれの取り組みを発表しました。どの企業も地域資源を活かし、持続可能な未来づくりに向けた独創的なアプローチで、糸魚川の可能性を広げています。
端材を価値に。糸魚川発・循環ものづくりの挑戦


林業→製材→建設を一気通貫で担うカネタ建設の紹介とともに、社員主導の感謝祭の楽しい様子を収めた動画も上映されたピッチでした。現場主義の人材育成で地域を巻き込みつつ、端材や杉葉など未利用材を活かした素材開発に挑戦。糸魚川杉の香りを閉じ込めたクラフトジン「SANKA」も紹介し、資源循環×暮らしの価値づくりを進める様子を紹介しました。
行政が動く。糸魚川CFT、30年先の幸せをデザイン


糸魚川市の若手職員5名が「CFT:Cross Functional Team」を結成した経緯を説明しました。補助金設計にとどまらず、行政自らがプレーヤーとなる共創に踏み出す様子を解説。糸魚川市役所内での公募で100案のアイデアを出し、28件の事業提案書を作成、2つを市長に直接プレゼン、一つがアイデア賞を受賞した経緯は圧巻でした。先進地視察や研修、Instagram発信を回しつつ、人口・財源・職員減の先を見据え、30年先も“今の幸せ”を守る仕組みを市民・企業と描いていくようです。
設計から運営へ。糸魚川・クラブハウス美山を核に、挑戦者が増える仕組みづくり


設計の先まで担う“ ソーシャル・ビジネス・アーキテクト ”の永田氏は、糸魚川のクラブハウス美山で運営に踏み込み、改善を重ね来館は約2.5倍になったことを紹介してくれました。まちづくりの共創として立ち上げたThinkPlace研究所では、『 やりたいことで“わたし”と“まち”に輝きを 』を合言葉に、20名程度の仲間が動いていており、活動を通して3名が開業届を出すというインパクトの強い活動であることを説明。ニューチャレンジとして、人口が二人の超過疎集落の景観・建物・文化の再生にも挑む「 株式会社 伝燈 」の取り組みについて伝えました。
田んぼのまんなか、米が主役。糸魚川・早川「 mûrir 」が拓く“ 食の豊かさ ”


糸魚川市早川の清耕園ファームの中にあるレストラン「 mûrir(ミュリール) 」は、米を主役に据えた薪火コースで“食の豊かさ”を問い直します。播種から収穫までの物語を皿で表現し、糸魚川でも珍しい海と山が望める田園で味わう唯一無二の体験。農・加工・飲食を一体で進める清耕園ファームが、生産と提供が交わる場をつくって挑戦を続けています。



糸魚川・愛があふれるピッチの全貌はこちらだワン!
糸魚川のチャレンジャーによる事例セッション & クロージングトーク 【ビジネス共創拠点Cataloオープニングイベント】
糸魚川の美味に触れ、活気に満ちた懇談会




懇談会では、参加者が積極的に交流し、これからの糸魚川について熱心に語り合う姿が印象的でした。
【懇談会を彩った味】
ケータリング




- 柏崎『 kitchen 105 』による心のこもった料理
ドリンク




- 糸魚川の杉から生まれたクラフトジン『 SANKA 』
- 佐渡島『 t0ki brewery 』のクラフトビール
参加者の声



関係人口、地域課題の解決などに向けて、様々な方と出会える場として期待できると感じました。



糸魚川で官民がともに頑張っていることを知って嬉しく思いました。
Cataloでの活動が中心になって、糸魚川で起業・創業や就職を目指す人が増えていくことが期待できそうです。



地元にいると気づかない糸魚川の魅力を再発見できました。
何かしらの形で、未来の故郷のために力になりたいと、強く感じたイベントでした。



地域同士の化学変化・共創という発想に感銘を受けました。
また、糸魚川の海と山の近さ、商店街のたたずまいに心を吸い付けられ、そこを愛し覚悟を持って取り組まれている皆さんのお姿に心をゆさぶられました。
これからのCataloについて
Cataloは、自然と人が集まり賑わいのある雰囲気をつくるために会員(個人・法人)を募集しています。見学やお試し利用も可能ですので、まずは気軽に足をお運びください。
日常のワーク拠点として
集中作業やWeb会議など、普段の作業場所としてご利用いただけます。
会場貸しとして
研修・勉強会・イベントにご活用ください。普段の会議室を離れた少し”非日常”の空間は、発想転換やチームビルディングに最適です。イベントや勉強会、交流会など企画の持ち込みも大歓迎です。
街全体で盛り上げる仕組み
Cataloのこだわりは「 街を回遊してほしい 」こと。館内にコーヒースタンドは置かず、周辺へ自然に足が向く導線を設計しています。会員カード提示での提携店割引も準備中です。施設だけで完結せず、街全体で盛り上げていきます。
交流イベント「 セレンディネスト 」開催予定
名刺交換で終わらせず、『 出会いから” 巣(Nest) “ = 関係を育てる交流会 』を開催します。会員以外の方も参加でき、当日入会も受け付けています。



これからのCataloをよろしくお願いしますワン!