DX人材が足りない。
この課題を前にしたとき、多くの会社がまず考えるのは「 採用 」か「 研修 」ではないでしょうか。
求人を出す。研修会社の資料を集めて比較する。どちらも自然な流れです。
ただ、IPAの調査を見ていくと、その手前にもう一段階あることがわかります。
自社に何のスキルがあって、何が足りないのかを把握するという段階です。
そして、ここができているかどうかで、人材の不足感に大きな差がついていました。
本記事では、その調査結果を紹介したうえで、社内のスキルを見える化する具体的な手順を解説していきます。
本記事で解決できること
- スキルの見える化が、なぜ研修選びより先なのかがわかる
- 自社のスキルを一覧にする4つのステップがわかる
- 見える化でつまずきやすい3つのポイントがわかる
本記事の想定読者
DX人材の育成を任されたものの、何から手をつければよいか決めきれずにいる中小企業のご担当者様。
IPAの調査が示した52.8%という数字
IPAが2026年7月に公表した「 DX動向2026 」は、全国1,799社を対象とした調査です。
このなかに、DX推進に必要なスキルの把握状況を尋ねた設問があります。
結果はこうでした( 図表4-8 )。
「 必要なスキルは把握できていない 」と答えた企業が 52.8%。
前年よりはやや改善しているものの、半数を超えています。
さらにIPAは、「 必要なスキルを把握しているが、現在のDXを推進する人材のスキルの状態については十分に把握できていない 」と答えた企業の割合が増加していることも指摘しています。
つまり、必要なスキルはわかっていても、いまの社員がどこまでできるかは把握できていない。そういう会社が増えているということです。
半数以上が同じ地点にいる、と考えてよいでしょう。
把握している企業と、していない企業の差
この調査には、もう一つ注目したい結果があります。
DXを推進する人材の「 質 」の確保状況を、スキルの把握状況別に見た集計です( 図表4-10 )。
「 大幅に不足している 」と答えた企業の割合は、次のようになりました。
| スキルの把握状況 | 「 質 」が大幅に不足していると回答 |
|---|---|
| 把握している | 40.6% |
| 把握できていない | 64.0% |
差は23.4ポイントです。
IPAはこの結果について、スキルの把握状況が人材の「 量 」「 質 」の適切な把握や確保と関連していると述べています。
さらに、必要なスキルの把握状況をDXの成果の有無別に見ると、成果が出ている企業ほど把握ができている傾向にあることも示されています( 図表4-11 )。
もちろん、把握すれば人材が増えるわけではありません。
ただ、何が足りないのかがわかっている会社ほど、手の打ちようがある。そう読める結果ではないでしょうか。
なぜ「 見える化 」が先なのでしょうか
理由は3つあります。
1. 研修を選ぶ基準ができる
研修の資料を並べて比較しても、判断軸がなければ決められません。
「 このロールのこのスキルが足りていないから、この研修を選ぶ 」という順番になれば、比較は一気に楽になります。
社内で説明するときの根拠にもなります。
2. 採用要件が書けるようになる
求人票に「 DX人材募集 」とだけ書いても、応募する側は何を求められているのかわかりません。
必要なスキルが一覧になっていれば、要件が具体的に書けます。
3. 評価基準につながる
同じ調査で、DX人材の評価基準について「 基準はない 」と答えた企業は 76.1% でした( 図表4-6 )。前年の75.7%とほぼ同じ水準です。
評価基準がないまま人を育てると、本人も上長も、何をもって成長したと判断すればよいかがわかりません。
スキルの一覧は、そのまま評価基準の下敷きになります。
スキルを見える化する4つのステップ
では、実際にどう進めればよいのでしょうか。
情報システム部門がない会社でも進められる手順を4つに整理しました。
ステップ1:対象を絞る
最初から全社員を対象にすると、作業量が膨大になって止まります。
まずは DXに関わっている人、5〜10名程度 に絞りましょう。
いま業務改善を進めている人、ツールの管理をしている人、現場から相談を受けている人。この範囲で十分です。
ステップ2:ものさしを借りてくる
スキル項目をゼロから作る必要はありません。
経済産業省とIPAが公開している「 デジタルスキル標準 」を、そのまま社内のものさしとして使えます。
デジタルスキル標準 〜 経済産業省とIPAが策定した、DXに必要な知識・スキルの共通のものさし。2026年4月に ver.2.0 へ改訂された。
DXを推進する人材については6つの類型と17のロールが定義されており、全ロールに共通するスキルは5カテゴリー13サブカテゴリーに整理されています。
まずはこの類型・ロールの一覧を印刷して、社内の誰がどれに近いかを書き込むところから始めてみましょう。
ステップ3:現在地を3段階で記入する
細かく点数化する必要はありません。
「 できる 」「 支援があればできる 」「 できない 」の3段階で十分です。
大切なのは精度よりも、全員分が1枚に並ぶことです。
ステップ4:ギャップを一覧にして、優先順位をつける
空欄になった部分が、いま足りていないスキルです。
そのすべてを埋めようとせず、いま困っていることに一番近いものを1つか2つ 選びます。
ここまでできれば、研修を選ぶ準備は整っています。
やりがちな3つのつまずき
見える化に取り組む会社が、途中で止まりやすいポイントを挙げておきます。
全社員を対象にしてしまう
前述のとおりです。対象を絞れば1〜2週間で終わる作業が、全社にすると数か月かかります。
まず小さく回して、型ができてから広げるほうが確実でしょう。
項目を細かくしすぎる
スキル項目を細分化するほど、記入する側の負担が増えます。
そして細かい表は、作ったあとに誰も見返しません。
一覧が1枚に収まる粒度 を守るのがおすすめです。
一度で終わらせてしまう
スキルの状態は変わります。人も入れ替わります。
半年に一度、同じ表を更新する運用にしておくと、育成の効果も見えるようになります。
デジタルスキル標準そのものも数年ごとに改訂されるため、更新のタイミングを合わせておくとよいでしょう。
なお、DX推進者の育成を体系的に進めたい場合は、DX推進者育成研修のように、戦略立案からデジタル活用のプロセスまでを扱うプログラムを組み合わせる方法もあります。
まとめ|足りないものがわかれば、打ち手は決まります
本記事では、DX人材のスキルを見える化する意味と手順を解説しました。
- DX推進に必要なスキルを「 把握できていない 」企業は52.8%( IPA「 DX動向2026 」図表4-8 )
- 人材の「 質 」が大幅に不足していると答えた割合は、把握している企業40.6%、把握できていない企業64.0%( 図表4-10 )
- 評価基準について「 基準はない 」と答えた企業は76.1%( 図表4-6 )
- 見える化は、研修選び・採用要件・評価基準の3つにつながる
- 進め方は、対象を絞る → ものさしを借りる → 3段階で記入 → ギャップに優先順位、の4ステップ
DX人材が足りないという感覚は、多くの会社に共通しています。
ただ、何が足りないのかを言葉にできている会社は、まだ半数に届いていません。
そこを先にやっておくことが、遠回りに見えて近道かもしれません。
自社の現在地を、一緒に一覧にしてみませんか
「 手順はわかったけれど、うちの業務に当てはめると、どのロールをものさしにすればよいかが決められない 」
そう感じた方も多いのではないでしょうか。
どのロールを基準に置くかは、業種や事業のかたち、いま抱えている課題によって変わります。一般論では決めきれないところです。
MOVEDは850社を超える企業様のご支援を通じて、大手企業から地方の中小企業、自治体まで、規模を問わず「 課題の構造 」を見てきました。スキルの現在地を整理するところから、必要な研修の設計、現場に定着するまでを一貫して伴走しています。
まずは相談からでもお気軽にお問い合わせください。いまの状況をうかがったうえで、どこから見える化するとよいかを一緒に整理します。
サービスの内容を先に確認したい方は、資料ダウンロードもご利用いただけます。
社内の理解をそろえるところから始めたい場合は、なぜDXが必要なのか?基本勉強会という形でもご相談を承っています。