プレゼンの専門家が語る「伝わるプレゼンの法則」とは~望月正吾×渋谷雄大
「伝わるプレゼン」ポイントには3つの要素【ストーリー】【デザイン】【トーク】がそろう点にあります。
3つの要素がしっかり身につく実践型のセミナー「伝わるプレゼンアカデミー」で登壇する望月正吾さん(PreZenDou LCC. 代表)と渋谷雄大(MOVED代表)にプレゼンのコツ、なぜプレゼンに面白さを感じて起業まで行きついたのかを伺いました。
プレゼンの専門家が「事前に練習しない」という噂も直撃!
(聞き手:小泉=MOVEDカメライター)
おもちゃメーカーでの心構えがプレゼンで活きている!?
-プレゼンテーションの専門会社PreZenDouを設立されるまでの経緯を教えてください。
サラリーマン時代は、長年おもちゃメーカーにいて、最後はIT系の会社だったんです。
そこには1年くらいいたんですけど、会社が少し危うい感じだったので、辞めようと決心しました。
この時はまだ「プレゼンの仕事をやろう」と思っていなくて、半年くらいで就職しようとしていました。
だけど、その時は50歳を過ぎていたこともあって、これは無理だなと。それで何をやろうかなと思っていた時、知り合いに「印刷会社がコンペに参加するから手伝ってくれ」と言われて、企画書と役員のトレーニングまでを引き受けたんです。そしたら、その企画が通ったんですよ。それを受けて、「じゃあプレゼンの仕事でもやろうかな」と思いました。
-それまでに、プレゼンに関する仕事をされたことはありましたか?
おもちゃメーカーにいたときには、決算発表会のプレゼンや、新商品の記者発表会とかのコンテンツはほとんど私が作っていたんです。
それで、プレゼンの仕事をやろうと思って準備していたら、ちょうどスティーブジョブズが亡くなりました。そのこともあって、日本で初めてのプレゼンの専門会社として立ち上げようと考えていました。
たしかに、プレゼンといえばスティーブ・ジョブズですからね。
ですが同じように、友人が日本で初めてのプレゼン会社として会社を立ち上げたんですよ。なので、「日本初のプレゼン専門会社」の冠は外して、PreZenDouという会社を立ち上げました。
ーPreZenDouは、どのような理念を持って活動しているのでしょうか?
ビジョンは「世の中から退屈なプレゼンをなくす」です。
元々私はおもちゃ関係の会社で働いていたので、おもちゃを営業マンに向けてプレゼンしていました。
その時必要なのは、そのおもちゃがいかに面白いか、楽しいかを伝えることでした。
なので、プレゼンをするうえで、聞き手に楽しんでもらうことが今でも根底にあります。
確かに、おもちゃを買うかどうかの基準は「面白いか、そうでないか」ですよね。
おもちゃのプレゼンは、自動車や電子機械などのプレゼンと明確に違う点があります。
車やパソコンは、従来よりもスペックが上がった、排気量が下がったなどの数値が求められます。それに対して、おもちゃは「それ自体をいかに楽しめるか」が求められているんです。
だからこそ、プレゼン自体が楽しいと感じてもらわなければ、おもちゃの楽しさを伝えることはできません。
ー望月さんが作られている「プレゼン百鬼夜行」も、非常にわかりやすく、楽しくプレゼンテーションについて書かれていますよね。
モチーフを妖怪にした理由はあるのですか?
子どものころから妖怪が好きだったからです。ゲゲゲの鬼太郎の世代なので(笑)
望月さんの生み出すコンテンツは、どれも子ども心をくすぐりますね。
お互いが感じたそれぞれの魅力
ーお二人は何を通して知り合ったのでしょうか?
それは明確で、Prezi Nightの時です。
私は主催者側で、公募していた所に、望月さんが来てくれたのか、こちらから依頼したのかは覚えていないですけど、そこで知り合いました。
その前は繋がっていたんでしたっけ?
いえ、そこが初めてですね。
ただ、それ以降は毎回登壇させていただいていました。
「毎回新ネタ期待してます!」って言ってお願いしていました(笑)
ー初めてPreziNightで望月さんが登壇されていたのを見て、どのような印象を受けましたか?
コンテンツも含めて、ユニークな方だなと思いました。(笑)
1回目の登壇は、Preziを使ってPowerPointの話をずっとしていたんですよ。
そうそう!「そういう目の付け所なのか」っていう。毎回斜め上をいってる感じでした。
ー望月さんから見た渋谷さんは、どのような印象でしたか?
一言でいうと、さわやかでいいなっていう印象ですね。
プレゼンのとき、得するタイプですね。
ただ、もともとの仕事を聞いたうえで、ひとつ疑問はありましたね。
ーどんな疑問ですか?
渋谷さんの仕事をしてきたキャリアは、鍼灸師からIT関係に変わっていて、すごく特殊だと思います。その中で、どこに軸があるのかが明確にはわからなかったんです。
私の中では「育てる」という軸があります。
スポーツトレーナーも選手をサポートしながら育てていくし、ITのインストラクターも受け手を育てる。これから会社を続けていくこともそうですし、サイボウズの中でも、もう少し教える側になってくるので、そこにも「育てる」という軸があります。
なので自分の中では、まったく軸はぶれていないです。
キーワードが見えなかったんですけど、「育てる」が軸としてあったんですね。
アカデミー講師決定の裏側
ー望月さんが伝わるプレゼンアカデミーに携わることになったタイミングは、いつだったのでしょうか?
MOVEDメンバーから各ジャンルの講座担当を決めたタイミングで、伝わるプレゼンアカデミーにはまだ足りない要素があったので、そこをどなたかにお願いしたいと考えていたんです。
望月さんにお願いした理由は2つありました。
私は一度、望月さんのセミナー参加していて、そのセミナーが記憶に残ってました。なので望月さんにお願いしたら面白いだろうなと思って、お願いしました。
あと、デザイン担当は2人・トーク担当も2人・ストーリー担当が私1人という状態でした。
プレゼンは、いろんな人の話を聞けた方がいいなと思っていて、私が正解というわけではないので、あと1人、ストーリーをお願いしようと考えていました。
ー内容については、いままでのセミナーと、どのような違いがあると思われますか?
ストーリーについては、あまり本当の意味でのワークショップをやったことがないので、今回はちゃんとやってみようかなと思っています。
楽しみ。
このパートは時間がかかるので、大概は講義だけで終わってしまうことが多いんです。それを今回は、最終的に仕上げるまでやろうと考えています。
私の場合、今までは1日で終わることが多かったんです。
今回は、3か月間総合的に学び、それに対して継続的に成果を作り出してもらって、最後に今までの成果を出すという形です。
なので、フォローアップが今まで以上にできるのではないかと思っています。
プレゼンのプロのこだわりとは?
ーお二人が実際にプレゼンする場に立つ時に、意識していることやこだわりはありますか?
可能なかぎりインタラクティブにしようと思っています。
具体的にはどのようなことをするんですか?
質問を多く投げかけますね。それでアウトプットしてもらうことを意識しています。
確かにそうすることで、受講生により多くの学びを得てもられますね。
あとはグループワークをしてもらう時に、座らずに絶対に全員立たせます。
全員ペンをもって、ホワイトボードに書いてもらう。
そのことによって全員が参加している意識を強く持ってもらえる。
ーでは、自身がプレゼンをするときに、準備段階で意識していることはありますか?
正直いってあまりないです。
これをいうと怒られちゃうんですけど、練習もしません。
理由は、スライドのコンテンツを自分で作っていくと、その過程で頭の中に内容がインプットされるので、練習の必要がなくなるくらい、理解が深まるからです。
私も準備しない方ですね。
作り込む方に時間をかける。
ただ教えるときは練習しなさいっていうんですけどね(笑)
そうですね(笑) ただ、私たちも練習しないというのは何もしないわけではなくて、頭の中で想定してはいます。
「相手目線」で伝わるプレゼンを作る
ー渋谷さんの「伝わるプレゼンの法則」は、どのような内容になるのでしょうか?
「相手目線」を軸に考えているので、「いかに相手にワクワクしてもらえるか」を軸にするストーリーの考え方を、インストールする講座になります。
これは誰に届けたいのかというところを、土台として持ってプレゼンを作らないと、自分の想定と聴き手の求めているものがズレてしまうので、考え方を改めて意識してもらいます。
基本的に相手ありきなので、それに対応できるような基盤を考えられるようにしてもらう。
誰のための時間なのかというのは、どのプレゼンでも共通することだと思います。
テンプレートから学ぶ「ストーリー」
ー望月さんの『伝わるプレゼンのストーリー』は、どのような内容になるのでしょうか?
プレゼンのストーリーに絞った視点で書かれた書籍は、あるようでないんです。海外にはあるんですけど、すごい難しい。
話を受けた時に、改めていろいろな本を引っ張ってきて読み直したんですけど、実際にそれをもとにやろうとすると、一般の方には難しいと感じました。
そこで自分の本を読み返してみたら、ちゃんとまとめられていたんです。そのとき、本を書いたときにも、すごく苦労したことを思い出しました。
なので、最初に書いた本をベースにお話ししようと考えています。
その本には、何がまとめられていたかというと、「ストーリーのベースを作る型」を決めてあったんです。それに従って、一度みなさんにプレゼンを作ってもらおうと考えています。
実はそのテンプレートは、私が仕事をしていた時に徹底的に使わされたモノがベースになっています。
プレゼンは十人十色
それぞれ違ったプレゼンテーションの魅せ方をするお二人。
それを支えるのは、今までに積んできた経験でした。
まったく同じ人生を歩む人がいないように、プレゼンテーションにも、人の数だけ表現の仕方があります。
「相手が求めているもの」と「自分が提供できるもの」を見極め、経験を積んでいけば、より多くの方が、プレゼンテーションを楽しむことができるのではないでしょうか!
多くの登壇経験を持つプレゼンのプロたちが、一人一人に寄り添い、あなたのプレゼンテーションをレベルアップするサポートをします!
望月正吾さんプロフィール
玩具メーカータカラ(現タカラトミー)でマーケティング部門を担当。
2011年にプレゼンテーションの専門会社PreZenDou LCC.を設立。プレゼンテーション研修、制作、コンペ、個人指導と業務コンサルを行う。
著書に『直感に刺さるプレゼンテーション』(技術評論社)『最速で最高に魅せるPowerPointプロフェッショナルテクニック』(技術評論社)がある。
渋谷雄大プロフィール
1986年生まれ。東京メディカルスポーツ専門学校鍼灸科卒業。
2015年からサイボウズ株式会社のkintone(キントーン)エバンジェリストとして、年間140回を超えるセミナー・講演活動を担当。
2018年9月に独立、株式会社MOVEDを設立。
MOVEDの代表を務めながら、サイボウズ株式会社のエバンジェリスト、ICTコミュニケーションズ株式会社のコンテンツビジネス事業部長としても活動している。
著書に『伝わるプレゼンの法則100』(共著)(大和書房)がある。