業務改善に欠かせないECRSとQCDの考え方を解説

前回の記事(前編)では、働き方改革に必須の業務改善の目的とメリットを解説しました。
本記事は、その後編です。
業務改善の4原則ECRS、QCDと4Mの重要性、そして、今すぐ実践できる4つのアイデアを解説します。
無駄を省き、生産性を向上させるための具体的な手法を学び、効果的な業務改善を進めていきましょう。
業務改善の4原則 – ECRS
業務改善には4つの原則ECRSに沿って行うとよいでしょう。
以下でそれぞれ解説します。
Eliminate:いらない業務をやめる
Eliminateは、不必要な作業やプロセスを排除することを目指します。
これにより、業務のムダを減らし、効率化を図ります。
例えば、不要な会議を削減し、メールやチャットでの情報共有に切り替えるなど、価値を生まない活動を取り除きましょう。
Combine:似たような業務をまとめる
Combineは、似たような複数の作業やプロセスを結合して、効率を上げることを目指します。
これにより、業務の流れがスムーズになり、時間やコストの削減が可能となります。
例えば、類似したデータ入力作業を一度に行うバッチ処理に変更するなどが有効です。
Rearrange:担当者や業務内容を変更する
Rearrangeは、作業の順序や配置を見直して、より効率的な手順や担当者を配置することを目指します。
これにより、作業の流れが改善され、生産性が向上します。
例えば、工場の場合、製造ラインの配置を見直し、移動距離を最短化することで作業効率を向上できるでしょう。
Simplify:業務を可視化して簡略化する、属人化を防ぐ
Simplifyは、作業やプロセスを可視化して、誰でもわかりやすく、効率的に行えるようにすることを目指します。
これにより、エラーの減少や作業時間の短縮に期待できます。
例えば、複雑な手順を簡略化し、マニュアルやガイドラインを整備します。
マニュアルを作成後は教育や訓練を行い、誰でも同じ品質で業務を遂行できるようにし、属人化を防ぎましょう。
業務改善に必要なQCDと4Mの考え方
業務改善に必要な考え方は2つあります。
全従業員が知っておくべき重要な要素ですので、しっかり把握しておきましょう。
優先順位やバランスが重要となるQCD
QCDは、品質(Quality)、経費(Cost)、納期(Delivery)を表す頭文字を取ったもので、企業運営において重要な要素です。
業務改善を行う際は、QCDの優先順位やバランスのとり方に注意してください。
なぜなら、いずれか1つを優先し、ほかの2つが犠牲になると、顧客の信頼を失う可能性があるからです。

業務改善に取り組む際は、QCDの優先順位とバランスを考えて、施策を実行しましょう。
業務プロセスに必須な要素である4M
「 4M 」とは、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)の頭文字を取ったものです。
これらの要素は、製造業を中心とした業務プロセスの管理や改善において重要な役割を果たします。
たとえば、製造ラインの業務改善を行う際の活用例は、以下の通りです。
< 製造ラインの改善例 >
- Man:作業者に対して定期的な訓練を実施し、スキルアップを図る。
- Machine:機械の定期メンテナンスを実施し、故障やトラブルを未然に防ぐ。
- Material:高品質な材料を選定し、安定した供給を確保する。
- Method:作業手順を見直し、効率的で安全なプロセスを構築する。
このように、業務改善は4Mに沿って行うことで、スムーズに行えます。
今すぐ実践できる4つの業務改善アイデア
「 業務改善を実践したいけれど、アイデアが出ない 」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
以下で、今すぐ実践できる業務改善のアイデアを紹介しているので、参考にしてみてください。
マニュアルを作成する
業務の標準化や、効率化を図るためにマニュアルを作成するのは、業務改善に有効な手段です。
属人化を防ぐほか、誰でも一定の品質の作業が行えるようになるメリットがあります。
作成する際は、目的と対象を明確にすることが大切です。
< マニュアルの目的と対象例 >
- 目的:新人教育、業務の標準化、作業効率の向上など。
- 対象:新入社員、現場作業員、管理理社など。
利用者に応じた内容や表現を使用して、誰が見ても分かりやすいマニュアルを作成することが大切です。
専門用語や難解な表現を避け、実際の事例を盛り込んだり、図やイラストを活用して視覚的にも分かりやすくしたりすると良いでしょう。
作成後は、関係者、特に現場で実際に使う人にレビューしてもらい、誤りや改善点を指摘してもらいます。
マニュアルが完成したら、配布し、関係者全員が閲覧できるように共有しましょう。
システムやサービスを導入して自動化する
IT技術を導入し、特定の業務を自動化することで、人の手で行うよりミスが減ったり、品質が向上したりします。
たとえば、経理業務に経費管理システムや会計ソフトを導入し、自動化することで処理時間の短縮と入力ミスを削減できます。
ほかにも、勤怠管理や、在庫、受発注の管理など、定型業務の多くを自動化できます。
自動化をする場合は、導入目的と費用対効果を明確にして、自社に最適なツールを選びましょう。
コミュニケーションツールを使用する
コミュニケーションツールを使用することで、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、業務効率が向上します。
たとえば、社内SNSは情報発信やフォロー機能、チャットツールはタスク管理や進捗管理に役立ちます。
コミュニケーションツールを選ぶ際は、導入目的とツールの種類が合っているかや、使いやすさ、デバイスの制限がないことなどに注意しましょう。
適切なコミュニケーションツールを使用すれば、効率的に情報や意思を伝達できるようになります。
外注やアウトソーシングを利用する
社内の業務を外部に委託することで、企業は本来の業務にリソースを集中させることができます。
外注とアウトソーシングは、外部に業務を依頼する点は同じですが、以下の違いがあります。
外注 〜 コスト削減や社内で手が回らない業務をカバーするために、特定の業務やプロジェクトを外部の業者に依頼すること。(戦略性はナシ)
アウトソーシング 〜 単なるコスト削減を超えて、企業の成長や組織力を向上することが目的。(戦略性アリ)
外注では、成果物の製造や、単純なサービスの提供に焦点を当てており、戦略性は必要とされません。
アウトソーシングにおいて受託企業は、委託された業務に対して、高い専門性や戦略的なアプローチが求められます。
このように業務改善の目的によって、2つを使い分けると良いでしょう。
業務改善は目的を理解して効率よく進めよう
本記事では、前編と後編に分けて業務改善の目的について解説してきました。
以下に前編と後編の要点をまとめます。
- 業務改善の最大の目的は、業務効率の最適化。
- 将来的に労働力不足の可能性が高いため、業務改善は企業に必須。
- 業務改善を行うと、業務の問題点が見え、解決の糸口が見つかる。
- 業務改善は、いらない業務をやめたり、似たような業務をまとめるとよい。
- マニュアルの作成やシステム・サービスを導入して業務改善しよう。
業務改善の目的を、全従業員が理解していれば、物事を効率よく進められます。
「 なんのためにやるのか? 」をしっかり理解し、業務改善に取り組みましょう。

北野百恵