「 糸と魚と川 vol.18 」コネクティング・ザ・ローカル in HAKUBA!糸魚川と白馬の絆 

2025年3月25日、白馬村のエイブル白馬五竜スキー場で「 糸と魚と川 vol.18 コネクティング・ザ・ローカル in HAKUBA! 」が開催されました。

本イベントは、新潟県糸魚川市と株式会社MOVEDにより、地域の魅力を広く発信し、地域と都市の人々をつなぐ取り組みの一環です。

ワン丸

糸魚川市と白馬エリアの今までの関わり合いやこれからの展望について語り合ったトークセッションの内容をお伝えするワン!

目次

第1部:白馬と糸魚川における地域連携の実績とポテンシャル

オープニングトークは株式会社MOVEDの渋谷と糸魚川市商工観光課の宮路様によってイベントの趣旨と糸魚川の魅力についてお伝えしました。

初めは糸魚川内で開催されていた糸と魚と川ですが、2024年の9月は上越、2024年の11月は東京と、糸魚川を飛び出して交流を行っています。

「 糸と魚と川 vol.16 コネクティング the ローカル 」が開催!

「 糸と魚と川 vol.17 」開催!親子ワーケーションでシゴトもココロも豊かに

糸魚川はユネスコ世界ジオパークに認定されたり、北陸新幹線が開通してアクセスしやすくなったりと魅力にあふれた地域です。24のジオサイトや地質学を学べるフォッサマグナミュージアム、海の幸が楽しめる能生漁港、個性豊かな石拾いが楽しめるヒスイ海岸など様々なアクティビティを楽しむことができます。

そんな糸魚川と白馬エリアという異なる地域がどのように手を取り合ってきたのかとこれからの未来を、3名の登壇者の方に語っていただきました 。

和田 寛様:株式会社ズクトチエ 共同代表 
片山 良博様:株式会社 三愛旅行社 代表取締役
伊井 浩太様:株式会社 傳兵 伝兵水産

糸魚川と白馬の連携のきっかけ

糸魚川と白馬エリアのつながりの始まりは、2015年に北陸新幹線が開業し、糸魚川青年会議所(以下、糸魚川JC)がインバウンド事業に取り組んだことがきっかけです。

当時、インバウンド観光の需要が見込まれる中、糸魚川JCのメンバーだった三愛旅行社の片山様と伝兵水産の伊井様は「 糸魚川に海外からの観光客を呼び込むには? 」という課題に取り掛かります。

白馬と糸魚川 具体的な取り組み

3名の登壇者がそれぞれの立場から白馬と糸魚川をつなぐために行ってきた取り組みが語られました。

「 シーフードシャトルバス 」が生んだ信頼と実績

引用:糸魚川市観光ガイド 

さまざまな情報を集める中で、隣接する白馬エリアに多くのオーストラリア人スキーヤーが訪れていることを知り、白馬エリアについて調べ、多くの人たちと交流しました。白馬エリアでは夕食を食べられる店が不足し、いわゆる「 夕食難民 」という課題を抱えていることが分かり、糸魚川ができることはないか…そこで考案されたのが、「 糸魚川シーフードシャトルバス 」です。

オフシーズンとなる冬の糸魚川飲食店を活用し、白馬エリアから観光客をバスで迎え入れる計画を立てました。行政や観光協会の支援を受けて飲食店を回りましたが、初めは消極的な飲食店も多かったようです。英語対応メニューを準備することで「これなら 受け入れられる 」となり、合わせて16軒もの飲食店にご協力いただけました。高齢のご夫婦が営む駅前の定食店では英語で「 Where are you from? 」とノートを手渡すようになりました。

また、はっぴや横断幕を用意したことで、お客様は大喜び!大人だけでなく、子供連れのお客様には町家での羽子板やだるま落としなど日本の遊びを楽しんでもらう工夫もされました。

糸魚川の幸を白馬で楽しむ

白馬乗鞍温泉スキー場では、レストランを丸ごと伊井様にテナントに入っていただくという大胆な試みが行われました。伊井様が糸魚川から海の幸を持ち込み、現地で調理・提供することで、山のリゾート地でありながら“海の味”が楽しめる食の体験が実現しました。

スキー場で行うアンコウのつるし切りはエンターテイメントとしても楽しまれています。

この「 地元の枠を越えた仕入れと提供 」により、スキー場内のレストランの売上は入ってもらう前と比べて約2倍に伸びたそうです。「 魚がおいしい白馬 」という、かつて想像できなかったあたらしい旅の楽しみのひとつができています。

さらに、和田様の会社では宿泊施設を外部レストランとして開放し、夕食の場を求める観光客に向けて「 山吹食堂 」を開業しました。ここでも伊井様の食材がメニューに活用され、糸魚川で食材の手間のかかる処理を終えた状態で持ってきて頂けるため、手間をかけずに本格的な料理を提供できる体制が整いました。

連携を深める“暮らし”の視点

伊井様は、2023年に再び糸魚川JCの理事長を務める中で、「 ただのビジネス連携ではなく、人と人のつながりを大事にしたい 」と感じるようになりました。

地域間の連携を本当の意味で「 持続可能 」にするには、地元の人たちが実感できるメリットが必要!そうした考えから生まれたのが、白馬バレー(白馬・小谷・大町)エリアで行われていた「 ゴンドラの地元割 」を糸魚川市民にも拡大適用するという試みでした。

白馬岩岳の社長に直接交渉し、その場で「 じゃあ糸魚川市民も500円で乗れるようにしよう 」と即決。逆に、白馬の方が糸魚川に来てもらった際には、どこで美味しい魚が買えて、食べられるかを紹介させてもらうことで、糸魚川のことも好きになってもらえる。柔軟な対応により、糸魚川の人々が白馬に足を運びやすくなり、地域間の往来は一層活発化していきました。

地域連携の今後のさらなる展望と可能性:観光・産業・暮らしの連携強化

糸魚川と白馬の今後の展望として「 観光の広域連携 」「 産業の融合 」「 インバウンドの受け入れ強化 」の3本柱が語られました。産業面では、糸魚川の建設やリネン関連の企業が白馬で仕事を担うなど、すでに連携がスタートしています。白馬の課題を糸魚川の強みで解決するというモデルが確立すれば産業の可能性はもっと広がっていくでしょう。

また、海と山を一度に楽しめる地理的魅力を活かし、外国人観光客向けの長期滞在プランの可能性が語られました。糸魚川の相撲部見学やサイクルトレイン構想など、ユニークな地域資源の活用にも期待が高まる内容でした。

白馬から糸魚川を一緒の観光地エリアだと思ってもらい、観光地を“点”ではなく“面”として捉え、「 もう一泊して、別の魅力に触れてもらう 」仕掛けがカギになりそうです。

さらに、白馬へアルバイトにくる学生たちが、白馬から1時間も足を延ばせば海がある糸魚川があると認識してもらって、白馬だけではなく糸魚川の魅力も感じてもらい、「 年を取ってからここに住みたい、働きたい 」と白馬にも糸魚川にも思ってもらえるような働きかけについても語られました。

ワン丸

今後の展開に期待が高まるワン!

第2部:糸魚川 & 白馬の事業者によるピッチプレゼン

第2部では、糸魚川や白馬エリアを拠点に活動する事業者たちが登壇し、それぞれの取り組みや地域に対する思いをプレゼンテーション形式で共有しました。

会場では糸魚川の幸が振る舞われ、そのおいしさに舌鼓を打っていました。

ピッチプレゼンの前に、駅北広場キターレを運営する株式会社イールーの伊藤様からインバウンド事業について語られました。

「 ITOIGAWA IS THE PLACE THE 3000M JAPANESE ALPS FALL TO -1000M BELOW THE SEA OF JAPAN. 」

この言葉を軸に、糸魚川のダイナミズムを海外の観光客に紹介しています。糸魚川の相撲文化や、親不知の断崖絶壁をめぐるカヤックツアーも人気を集めているようです。

今回、糸魚川の森の香りを楽しむために特別に紹介されたのが「 SANKA 」という名のクラフトジン。

SANKA=山河=杉香=讃歌=さんか
人々が森に参加する

廃棄予定だった糸魚川杉の端材や葉を活用し、東京の蒸留所と共同開発した一本です。上品で柔らかな杉の香りが、森を歩いたときのような余韻を残してくれます。森を守る行動に“参加”するきっかけとなるよう願いが込められたジンの登場は、会場に静かな感動を呼びました。

伊藤薫様:株式会社イールー代表
駅北広場キターレ運営

その後は、地元企業による連続ピッチが展開されました。

日本全国対応 送料無料のクリーニングサービス 株式会社大和屋

永江 宏徳様:株式会社大和屋

リネンサプライ、クリーニング、不動産や建設業を展開する大和屋グループ。最新の工場設備を紹介する動画では、100kg単位で洗濯する大型機器を紹介。新商品として「 ひすいスポンジ 」も開発し、糸魚川の名を広めようとしている。

日本の心地よさを体験する「 ガーゼ体験施設 」構想

五十嵐 昌樹様:ファクトリーブランド ao(アオ) 代表
株式会社美装いがらし 

糸魚川で60年続く縫製工場が立ち上げた「 ガーゼ体験施設 」構想。ガーゼ素材の心地よさを活かした「 風を感じる服 」をテーマに商品づくりを全国展開している。独自ブランドで、伝統の和紙を使った館内着など宿泊施設との連携も進めている。

日本海を望む日本料理店 鶴来家 -人生の節目や大切な時間を少しだけ贅沢な気分に

青木 資甫子様:日本料理 鶴来家 若女将

鶴来家はミシュランにも掲載された日本料理店。夕日が望める店内で、糸魚川の旬の食材を用いた料理を提供。「 走り・旬 ・名残 」を大切に、地元の四季を五感で味わえる空間を生み出している。

糸魚川の食材を使ったメニューで地域の魅力を発信するカフェ

今野 直倫様:絲と糸

絲と糸 は移住2年目の若手経営者が運営するカフェ。「 地域につなぐ、未来につなぐカフェ 」を掲げ、プリンやジェラート、ランチなどに地元食材を活用。新しくオープンする店舗は駅から徒歩2分の立地で、観光案内のハブとしての役割も担っている。

これからの求められる人材育成

植田 剛士様:株式会社MOVED 
浄土宗僧侶

MOVEDは「 人が変化に対応できる力 」を育てる人材育成企業。デジタルスキルやプレゼン力などを高める研修を通じて、変化の時代をしなやかに生きる人づくりに取り組む。ビジョンは【 すべての人に心を動かす「 きっかけ 」を 】。

糸魚川市の取組

Grace Yu様:糸魚川市 商工観光課

糸魚川市のインバウンド事業の報告として、白馬のスキー客向けに実施した「 Hidden Beauty Experience in Itoigawa 」ツアーの紹介。寿司体験や相撲・太鼓体験が高評価を得た一方で、食文化の違いやニーズの多様化といった課題も共有された。

森に囲まれたワーケーション施設:クラブハウス美山

永田 伊吹様:クラブハウス美山

森に囲まれたワーケーション施設クラブハウス美山の紹介。5千冊の本があり、子連れのお客様も多くいらっしゃる。まちづくりや若者向けの交流事業を展開しており、お花見イベントを予定。地域内外の交流の場として注目を集めている。

白馬から流れる姫川で育む大地の恵み「 自然栽培や特別栽培 」で自然を守り未来へ繋ぐ循環型農業を目指して

鷲沢 邦行様:米農家アイファーマーズ

白馬岳から流れる姫川が糸魚川の豊かな大地に流れ、育まれる自然農法のお米について紹介。「 お米はただの食品ではなく、大地と人が織りなす物語そのもの 」と語り、持続可能な農業への思いを強くにじませた。

白馬ブームの終焉と課題

大塚 栄青様:有限会社ぴー坊/From p

白馬でグランピング施設を展開する白馬の事業者。冬のイメージが強い白馬の観光において、サウナを軸に新たな需要を創出している。実際、来場者の約6〜8割がサウナ目的で訪れており、スキーを目的としない層の存在感が増しているという。地域のリゾートや観光資源との連携も視野に、白馬の持続的な観光の在り方を探っている。

ワン丸

地域課題と真摯に向き合う姿勢と、未来への創造力が垣間見えたワン!

白馬と糸魚川、地域を越えて生まれる共創のかたち

「 糸と魚と川 vol.18 」は、白馬と糸魚川がこれまで築いてきた連携の歩みを共有し、地域を越えた共創の可能性を探る場となりました。

第1部では、“ シーフードシャトルバス ”やスキー場での海鮮提供、宿泊施設との食の連携など、白馬の課題を糸魚川の強みで補う実践的な事例が紹介され、観光と暮らしの両面で結びつきが深まっている様子が語られました。第2部では、杉の端材を活かしたクラフトジン「 SANKA 」の紹介のあと、糸魚川の食・衣・農業・人材育成に関わる多様な事業者が登壇。地域資源の可能性と、持続可能な取り組みへの想いが共有されました。

異なる地域が交わることで、新しい視点が生まれ、課題の解決にも新たな可能性が見出されていく。白馬と糸魚川というまちが結びつき、多層的なテーマで共創する姿は、これからの地域づくりにおけるひとつのモデルとなり得るのではないでしょうか。

今後もこの出会いが、地域を越えた実践と挑戦へとつながり、互いの魅力を高め合う“ 面 ”の連携へと育っていくことが期待されます。

すべての人に、心を動かす「きっかけ」を。
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